〜猫伝染性腹膜炎とは??〜
猫伝染性腹膜炎(読み方;ねこでんせんせいふくまくえん)とはコロナウイルスの一種である猫腸コロナウイルス(FECoV)がなんらかの原因で猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に突然変異し、それによって引き起こされる病気です。
様々な臓器に炎症を引き起こし、不治の病と言われている非常に怖い病気です。
多くの猫ちゃんの体内に存在する猫腸コロナウイルス(FECoV)が突然変異し、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)が出現します。
突然変異を起こす原因は、子猫、老猫など免疫力の低い猫ちゃん、また、多頭飼いでストレスを感じている猫ちゃんに多く発症するということがわかっています。
ただ、一概には言えません。あくまでも原因の一つとして捉えておいてください。猫腸コロナウイルス(FECoV)が猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)になる確率はだいたい10%以下と推計されています。
〜どんな症状が出るの??〜
下記のような症状が現れます。
・元気消失
・食欲不振
・発熱
・発育不良(子猫ちゃんの場合)
・腹膜炎、胸膜炎
・腹部や胸部に水が溜まる
・黄疸
腹膜炎には「乾性型」と「湿性型」の2パターンがあります。
湿性型
ウェットタイプや滲出型とも呼ばれ、腹または胸に水が貯まります。胸腔、腹腔、心膜腔といった体内にある隙間に、タンパク質を多く含んだ漏出液が貯留するのが特徴です。
腹部に水がたまって異様に膨らむ腹水(読み方:ふくすい)や、胸膜炎、及び胸腔に水がたまる胸水(読み方:きょうすい)などの症状が現れます。
水が溜まることにより、呼吸困難に陥り、数日~数ヶ月の内に死亡してしまいます。
乾性型
ドライタイプや非滲出型とも呼ばれ、肝臓や腎臓、眼や脳などに肉芽腫(しこり)ができることもあります。
硬い塊が体の組織にできて、それぞれの臓器の本来持っている機能を妨げるのです。
肉芽腫ができた場所によって症状は様々で、下記のとおりです。
脳
脳に肉芽腫ができると、脳は体の機能全てに繋がっているため、神経的な異常が出るといった症状が出ます。例えば、神経に異常が出ることによって、痙攣や発作などを発症することがあります。
腎臓
心臓に肉芽腫ができると、口臭がひどくなったり、水を飲むペースが早くなったりします。腎臓は血液から老廃物を取り除く役目をする臓器です。そこに異常が出ることによって、血液中に老廃物が溜まってきてしまいます。
肝臓
肝臓に肉芽腫ができると、下痢や嘔吐をするようになります。肝臓は体内に侵入した毒素を解毒する働きをもつ臓器で、栄養も貯めることができます。そこに異常が出ることによって、毒素の解毒作用が効かなくなり、食べたご飯をエネルギーとして変換できなくなってしまいます。
眼
目に肉芽腫ができると、角膜と虹彩(読み方:こうさい)の間が濁ったり、出血します。目は特によく見ることができ、飼い主さん自身も異常の判断がしやすい部分となっています。
黄疸(読み方:おうだん)
猫の白目の部分や地肌(毛の無い部分)などが黄色くなります。尿が山吹色になったりもします。
〜原因はなんなの??〜
原因は「ストレス」、「接触感染」です。 空気感染するとは考えられていません。
ストレス
猫腸コロナウイルス(FECoV)が猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に突然変異する要因にストレスが挙げられます。
そのストレスの原因になるのが多頭飼いという研究があります。猫ちゃんは縄張り意識が高いため、自分のテリトリーに他の猫ちゃんが入ってくることでストレスを感じます。人間も同じですね。
かつては、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に感染するのは多頭飼いをすることによって、感染した猫ちゃんから他の猫ちゃんにウイルスが伝染するためと考えられていました。それゆえに「伝染性」腹膜炎という病名になったようです。
ただ、研究が進むにつれて、猫伝染性腹膜炎の発症率を「多頭飼い」と「単頭飼い」で比べたところ、「多頭飼い」での猫ちゃんの方が感染する確率が非常に高いことがわかりました。
新たに猫ちゃんが家族に加わったことでウイルスを持ち込み・感染というよりはストレスが原因ということが考えられます。
接触感染
猫腸コロナウイルス(FECoV)はほとんどの猫ちゃんが体内に保有していると考えられています。このウイルスはほとんど無症状でたまに消化器疾患を発症する程度でたいして怖いものではありません。猫ちゃん同士がケンカしたり、舐め合ったりして感染します。
★ちょっとまとめ★
いろんなウイルス名が出てきて、感染しやすいだの、感染しないだのわかりずらかったと思うので、サクッとまとめます。
猫腸コロナウイルス(FECoV):感染しやすい、無症状
↓(突然変異を起こすと…)
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV):感染しない、重症化
まずはこれだけ覚えてください。
〜治療方法はどんな感じ??〜
今現在、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)を退治する薬はまだ存在していません。そのため、治療法が無く、感染してしまった猫ちゃんはほとんどが命を落としてしまいます。
成猫ちゃんで体力のあるうちは発症しても重症化を抑えることができます。それでも1〜2年で亡くなってしまいます。
子猫ちゃんや老猫ちゃんの場合は、体力がなく、免疫力も低いため、数ヶ月といったとても短期間で亡くなってしまいます。
治療法というより、症状・苦痛を和らげる処置が取られます。いわゆる「延命治療」です。免疫力をコントロールするためにインターフェロンやステロイドが投与されます。また、二次感染を防ぐために抗生物質(テトラサイクリン系やマクロライド系)を投与することも多いです。
ただ、日々世界中で研究がされており、「Broad-Spectrum Coronavirus Protease Inhibitor」という、猫腸コロナウイルス(FECoV)の増殖を抑える治療法の研究が進んでいます。近い将来、治る病気になることを祈っています。
〜予防方法はあるの??〜
予防方法はまず、狭い部屋で多頭飼いをしないことです。正直、人間も狭い部屋に何人もいると自分の居場所がなくなってきて、ストレスを強く感じます。
特に猫ちゃんは自分の縄張り意識が高いため、常に同じ空間で逃げ場がないとストレスを感じ、猫腸コロナウイルス(FECoV)が猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に突然変異するタイミングを多く作り出してしまいます。
たしかに、飼い主さんが日中いなかったり、お留守番を時間が長い時は、猫ちゃんに寂しい思いをさせたくないと「多頭飼い」をする方もいらっしゃると思います。
ただ、例えばワンルームで2匹飼うとどんなに中の良い猫ちゃん同士でもお昼寝のタイミングは違うので、リラックスするタイミングを失うこともあります。
なるべく単頭飼いするか、何部屋かある家で多頭飼いするかが望ましいです。(難しい話だということは承知して書いてます…。)
また、室内飼いをすることも予防の一つです。突然変異する前の猫腸コロナウイルス(FECoV)は感染しやすいウイルスです。外出することで、他の猫ちゃんから移ることがあるので、感染経路を遮断するために完全室内飼いをオススメします。
〜結局のところ〜
「しばらく様子を見てみよう」は禁物です。たしかに治療法は確立していない病気ですが、愛猫ちゃんから苦しみを取ってあげることはいくらでもできます。
また、この病気はストレスが主な原因と言われているため、ストレスを感じる環境であれば、環境を変えてあげてください。
簡単に書いているようで申し訳ありませんが、この病気は「予防」がかなり重要なポジションを握っています。
多頭飼いして、賑やかな家庭で過ごすのももちろん楽しくて良いと思います。ただ、それが猫ちゃんにストレスを与え、病気になってしまったら元も子もないです。飼い主さんも悲しい思いをすることは明白です。
まだ、猫ちゃんを飼っていない方でこれから飼おうとしている方がご覧になっていただいていたらですが、ご家庭の環境を視野に入れて、猫ちゃんを迎え入れてあげてください。
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最後に
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